しぐれ庵

ロンリー・ウーマンが棲む自由空間から発信します。

不適切動画によるバイトテロと村田沙耶香『コンビニ人間』

不適切動画の拡散が相次いでいる。
当事者は仲間内のつもりで投稿した動画が、不特定多数により拡散された。
その動画がテレビで繰り返し放映されたことで、企業イメージに大きな打撃を与えた。
コンビニや外食産業など、いずれもチェーン店が動画の現場である。

わたしも度がすぎた悪ふざけには眉をひそめるが、それだけではすまないと思う。
勤務中に動画を撮影できるということは、管理者が不在だということを意味する。
非正規社員が圧倒的多数の職場で、低賃金に喘ぎながら仕事をしている構図が浮かぶ。
社員教育と同時に、非正規社員に正当な賃金を払ってほしい。
そのことにより、安さを求める消費者にも影響が及ぶだろう。

被害を受けた大戸屋は、3月12日に一斉休業し、「全従業員に対する教育や研修の再徹底」や、「店舗や事務所の清掃」を行うという。
この休業などにより失う利益はおよそ1億円に上る見込み。
大戸屋の本気度をアピールするつもりだろうが、研修の内容が気になる。
非正規社員の給与アップについては、わたしの知る限り触れていない。

一方、被害を受けていないスターバックスコーヒージャパンが、8年ぶりに主力商品を値上げする。
「従業員の働く環境を改善するための投資にあてる」とのこと。
こちらには有効性を感じる。
スターバックスコーヒージャパンについては、2014年、800人の契約社員を全員正社員にするという記事を新聞で読み、わたしはその大胆さに驚いた。
条件をつけないところが気に入った。

   §

大阪府東大阪市のセブン-イレブンのオーナーが、人手不足から24時間営業をやめ、朝6時から深夜1時までの営業に変更したところ、セブン-イレブン本部から契約解除と違約金1700万円を通告された、というニュースが社会問題になった。

セブン-イレブンに限らず、大手コンビニではオーナーが過労死しても、オーナー側が搾取されても、契約上は問題なく合法だという。

セブン-イレブン・ジャパンは、3月中旬から全国の直営店10店で、営業時間を午前7時~午後11時とする実験を開始する。
理由は「原則24時間営業を続ける経営方針に変わりはないが、社会構造の変化、環境変化に備えて、実験を開始する。東大阪市の加盟店オーナーとの問題も実験開始のひとつの契機となった」。
元々の7時~11時営業に賛同する消費者の声が、大きかったのだろうか。

深夜勤務中に店員が強盗に遭った、という事件があった。
賃金が安くてバイトが集まらない、電気のムダ使いなど問題が多い。
24時間営業でないと困る深夜労働者の声が、テレビで紹介されていた。
7時から23時まで営業しているのなら、消費者はそれに合わせた行動をとるほかない。

   §

芥川賞を受賞した村田沙耶香の『コンビニ人間』をおもしろく読んだ。
主人公の古倉という女性は、「コンビニ人間」と称するロボットとして、有能なアルバイト店員である。
「使える道具として働いている」と彼女は意識している。
大学1年生からアルバイトをはじめ、卒業後もつづけているので、勤続18年のベテランだ。
村田沙耶香が芥川賞を受賞時にコンビニで働いていたので、現場がリアルに描かれている。

小説の最後に、「コンビニ人間」というロボットは暴走する。

不適切動画を投稿した若いコンビニのアルバイト店員は、ロボット化を強いる社会へ抵抗したのかもしれない。
彼らににその意図はなかったとしても。